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ねこが超です。主に関西の写真・アート展示のレポート・私見を綴ります。

【レクチャー】都市計画の思想と場所/中島直人 先生(ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭)

 【レクチャー】都市計画の思想と場所/中島直人 先生(ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭)

H30.11/13(火)都市論のイベント。都市計画の今ということで、都市計画家が策定したプランを上から下へ下ろす時代ではないことを改めて認識する。

演者は東大・都市デザイン研究室の助教を務めておられる中島直人 先生。

本講義のタイトル『都市計画の思想と場所』は、中島先生の著書タイトルに由来する。書籍が都市計画の歴史をまとめたものであるのに対して、本レクはそのイントロ及び中島先生の直近の取組事例を紹介。 

 

レクでは、都市計画/都市計画家という語に対応させて、よく似た「アーバニズム/アーバニスト」という語をあえて用いて意識をする。これには2つの意味がある。

①「都市計画の専門家」(=都市計画家)

②「都市に住み、生活を楽しんでいる人」

ここでいう「アーバニズム」は二者択一ではなく、①・②どちらをも重ね持つ。ここが重要で、中島先生は官・法令によるトップダウンの都市計画ではなく、一般の市民、生活者らが参加して起きる運動に関心を寄せている。国内の歴史として、戦前の「都市美運動」(1925)や石川栄耀の存在が挙げられた。

 

よき都市計画は「戦略」=目指すべき目的や目標を有した上で、「戦術」=個々に適宜とられるアクションを伴う。後者の「戦術」はよく「社会実験」(日祝日だけ車道を歩行者天国にするなど)として実施される調査、試行が良例だが、アメリカでは目的や検証がしっかりしている反面、日本ではただ単発で行われて終わりという企画も散見される。

締め括りの言葉は「都市は都市計画家の作品ではない。むしろ都市計画家こそが都市の作品である。」、すなわちアーバニストは自分の生まれ育った都市によって育まれた感性や問題意識によって、後年、都市に対して良き働きかけを行うようになるとのこと。文化・芸術と同じだ。

 

要は、都市の民は生きているということ、生きている以上は、暮らしを都市の空間へと及ぼす・投げ返すということ、それによって都市空間が変容すること。

 

空間を先に用意するとだめ。目的を決めて空き地を作ったり建物を並べて、そこに人が集まると考えるとだめ。これまで行政がやらかしてきた発想では、死に場ができる。人が集まるには、集まりたいと思う・集まることができるための要件がある。(今回のレクで見事に参加者が中高年の男性だらけになったことにも言及があった――開催日時と場所による結果)

 

・パブリックスペース ≠ 公的な空間、行政などが用意・確保する空間

         ◯皆が歩いたりとどまったり、一定自由に使える空間

 

【取組事例①】高島平プロムナード

www.city.itabashi.tokyo.jp

・まちの中心軸として走る太い車道の脇に設けられた緩衝帯の緑地を、パブリックスペースとして再考する。(現在:木のある歩道というだけ。夜は暗い。人がいない)

・周辺の居住区もそれぞれ特性が違う

・前提となる環境がかつてと違う(車の性能、物流量)

 

【取組事例②】上野スクエア

 <★Link> http://tohbun.jp/pts/ueno-square/

・上野、秋葉原、神田、谷中(やなか)あたりを「場」として、繋がり、開放系で捉え直す。「文化資源」の観点でつないでいく。

(not 「施設」__美術館、博物館、動物園 …「点」のため、人が回遊しない)

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都市計画は、一般的には法令や制度のことを指す(A市の都市計画において、Z地区の用途地域は商業地域なので、建ぺい率◯%、高さ◇㍍の物件までは建てられる、等)。

が、ここでは暮らしのレベルで都市を考えて環境改善を試みたり、地元民などが自発的に手を挙げてそうした活動を企画していくといった運動をも包含する。

都市計画の基本的な3要素は「土木」「建築」「造園」だが、これに「文化」(民の生活、精神)を加えることが肝。

 

今日の都市計画に連なる系譜として、「アーバニズム」という語の歴史を振り返った。まず近代のアメリカが起源に挙がる。1920年代のシカゴ、この時点では社会学の範疇としてこの語が用いられた(シカゴ学派)。

世界で、アメリカにおいても当時のシカゴは例外的な摩天楼の近代都市である。その後、車社会を旨とした都市計画が為されてゆく(ル・コルヴィジュエ「輝く都市」)が、「アーバニズム」の始まりはあくまで「都市に生きる人」という射程である。

そして現代のアメリカにおける「アーバニズム」の様態が時代区分ごとに三点挙げられた。

 

①ニュー・アーバニズム(1990年代)

ランドスケープ・アーバニズム(2000年代)

③タクティカル・アーバニズム(2010年代)

 

①:脱・くるま社会。アメリカならではの発想という感があるが、くるま中心の都市は、車道と駐車場がインフラのベースになってしまい、多様性や柔軟性の乏しい空間になる。それを人が電車、トラムに乗り降りしたり、歩き回ることで、公園ができたり建物の表情も変わる。

②:①と同じく都市改良的な目線で、環境を読み替えてリノベーションしてゆく試み。NYの例では廃線跡を歩道、緑地帯にしたりする。土木・建築>造園 だった関係において、本来の生態系の力を復活させる。

③:ボトムアップ型の方法論、個別の戦術。「社会実験」で時間・空間を限定して試行するという事例(歩行者天国など)。

(⇔ ①・②:根本から街を変えるトップダウンの計画)

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( ´ - ` ) ニャー。