nekoSLASH

ねこが超です。主に関西の写真・アート展示のレポート・私見を綴ります。

【写真展/KG】KYOTOGRAPHIE 2016_四条烏丸②(無名舎、誉田屋源兵衛、ギャラリー素形、堀川御池ギャラリー)

KYOTOGRAPHIE2016_四条烏丸②として、無名舎、誉田源兵衛、ギャラリー素形、堀川御池ギャラリーを巡回します。

 

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さっとNo.2a~6の4カ所についてまとめる。

 赤No.7と黄色No.35は別途まとめ。 

  

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○赤No.6_無名舎/マグナム・フォト『EXILR ―居場所を失った人々の記録』

 泣く子もだまる写真家集団「マグナム」の展示。

 

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「自由に手に取って閲覧できる」 という展示スタイルがとられた。

それは箱型展示であった。

地味に新しい。写真が立体。触れられる写真。

美術品としてではなく、掌サイズのIF ああ、ありだなー。

 

f:id:MAREOSIEV:20160502114653j:plainマグナムの活動は報道写真に限定されるものではないが、本展示は難民、移民の姿にフォーカスが絞られていた。

閲覧者は、国・時代をシャッフルされた箱を手にとっては、裏をめくって、いつ・どこの・何の紛争か、キャプションを確認する。意外なほどに、さかのぼることベトナム戦争ぐらいまでは、写真の古さを感じなかった。本展示の面白さはそういう、写真というメディアの越時代性にもあると感じた。印画技術すごいんですよ絵が劣化しない。 

 

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世界は揺れに揺れていて、人は望まない移動を続けていることが改めて分かった。

そして私達の、忘れの速度も半端ではない。

深刻ぶった話をしたいわけではないが本当に「この内戦、名前は知ってる」「いやあこんなんありましたね」が多すぎて正直引く。そして難民になった大勢の人たちってその後どうなるのか全然知らない。

 

という壮大な問題提起に身をよじりながら普段は買えない巨大なマグナム本をめくりつつ、若いころのマドンナ美人!ウッドストックたのしそう!とか結局たのしいビジュアルに脳が花でした。

 

そういう写真も見たいな、マグナムの花の部分。

 

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 無名舎はすぐれた京町屋で、さきに紹介した「長江家住宅」と同じく、畳で中庭付きの、玄関から先の奥行き深い、すばらしい古民家どす。

 

 

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マグナムの難民告発フォトの獄的熱度と対比して、京町屋を評価するのも一興。

京町屋の宿命として、夏にかけて涼しい。冬はめちゃくちゃに寒い。

住めないなー 避暑地的に夏だけ遊びに来たい。

すだれの涼感 あうっ   

 

 

 

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マグナム本をめくりながら窓下をながめる。

全国でもこの忍者屋敷みたいな奥行きの深さはまず例がないと思う

んだ。 うっとり^^

 

 

○赤No.5_誉田屋源兵衛 黒蔵/クリス・ジョーダン+ヨーガン・レール『Midway:環流からのメッセージ』

 

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\(^o^)/ わあいPOPだ

 

と喜んでいたらあとでへこむ。 

 

 

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 色とりどりの・・・それは全て海岸で採取されたゴミであった。

だいたいこれで作品のベクトルの想像はお察し。

 

そうだ。海がまずいことになっているって知っていました

か?  ヤバいのは真夏の須磨海岸だけじゃない。

 

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古民家の厨房など回廊を抜けて、ギャラリー「黒蔵」(くろぐら)へ向かう。

こちら誉田屋源兵衛(こんだやげんべい)さんは帯の製造卸をされている。

その敷地内に元・蔵のギャラリーをお持ちで

 

 

クリス・ジョーダン氏の写真が映える。

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(/ _ \)  

 

合掌ですよ。

 

私これをWebで見て、てっきり、鳥の死骸と周辺のゴミを配置しなおして作った、デスアートとしての作品だと思っていた。

 

実際の死骸そのものであるとのこと。

 

 

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海に何が起きているか。

プラスチックゴミの被害は日本ではあまり報じられていないものの、さきのような奇怪な鳥の死骸を次々に生み出している。

厄介なのは、ペットボトルのキャップのような、目で見てそれと判るサイズどころか、小魚やクラゲまでもがプランクトンと間違えて摂取してしまうような微細なプラスチック片―マイクロプラスチックが、大量に海を漂っていることである。

それらが生物濃縮の原理によって生態系ピラミッドの上部に位置する海鳥にはプラスチックが高度に蓄積され、写真のような奇怪で悲惨な死が待っている。

 

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 異物を食べて満腹感を得てしまうだけでなく、体内で有害な添加物が溶けだして体に取り込まれてしまう。 

海で何が起きているのか。えらいことが起きている。人類大丈夫か。可能であればいつか太平洋ゴミベルトに上陸して撮影してみたい。

 

 

 また、写真作品ではないが、ヨーガン・レール氏の光るオブジェ群も深い印象をあたえてくる。

 

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99年ころから石垣島に移り住んで、海岸のゴミ掃除を日課とするかたわら、ゴミを用いて作品作りをしていたという。

 

その結果このような、醜いものから美しいものを生み出すに至る。

 

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/(^o^)\ 元・ゴミのはずが ・・・!

    異世界の海中生物・・・!

 

ゴミをここまで・・・。

 

 

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( ゚へ ゚ ) これは誰も真似できない形での問題提起であるよ。

 

映像作品もあるね。

 

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 ( ゚q ; ) 海鳥が生きながら弱って死に向かっている様子がよく分かったので切なかった。

死は急に訪れるのではなく、徐々に近づいてくるものであった。 

 

○赤No.3_堀川御池ギャラリー1F/ティエリー・ブエット『うまれて1時間のぼくたち』

私には子供がいないんだが赤ちゃんの写真なんか見て

刺激が強すぎませんかね、血圧どうかしそうで不安。

 

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ティエリー・ブエットの作品はこの上の赤ちゃん写真のやつ。

京都の板壁に活き活きとした肌色がよく合う。 

 

 

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生後一時間以内の新生児の撮影。病院が協力している。交渉の過程などが想像もつかない。それが本物の作家ということであろう。私は病院勤務の事務職員だが、やれることは多々ありそうなものだが、本業と写真を完全に切り分けねばならないという考えがまずあるため、このような企画には脇腹をえぐられる思いがする。もっとも、個人的には妊産婦や乳幼児や周産期に興味がないということもある。ぐぎぎ。

 

 

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キャプションにはそれぞれのベイビーの性別と生後何分が経過したかが記されている。

じっと見ているとなぜか妙に中高年の顔に見えてきて非常に混乱した。特にOSAKAの南のほう(新世界など)でよく出くわすおっちゃんにそっくりなのである。このあたりの「無垢なオッサンにおける幼児性」は特殊漫画家・根本敬が指摘していたことでもあるが、改めて確信した。赤ちゃんの顔には後の人生の全てが凝縮している。

 

 

○赤No.4a_堀川御池ギャラリー2F/福島菊次郎『WILL:意志、遺言、そして未来』

 おそらくKYOTOGRAPHIE2016の中でも最もハードコアで、「個」のチカラを見せつけた作品群。

 

福島菊次郎。こんな男がいたのか。

ジャーナリスト魂の極地。いや、報道という言葉でさえ彼の前ではぬるい。告発者である。日本という国家の臓物の裏側まで引っ繰り返すような、恐るべき眼が光る。企業や国家にとっては、テロリズムとでも呼びたくなるような告発に満ちている。一方で、原爆被爆者やその家族に向ける眼差しは優しい。 

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社会の全てに絶望した果ての、瀬戸内海の無人島・片山島へ移住しての自給自足生活。

そして昭和天皇だけ先に逝かせてなるものか、という思いからの「戦争責任展」。

もうこれだけで何か圧倒的なものがあるが、一体どこからそのエネルギーは湧いてくるのだろう。会場内撮影禁止のため示せるものはないが、その眼は民主主義や戦後復興、原爆ドームと平和など我々が当たり前に「安全・安心」と受け止めているものの実態へ激しく切り込んでいる。

 

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そんなお約束に真っ向から反発するのが福島氏である。1989年に胃ガンで手術してから2015年つい最近まで存命していたという驚異的な生命力の持ち主。死に場所、生き場所を国家権力の都合に左右された者の怒りと強さが伝わってくる。というか、戦前戦後と、高度成長期前後、Web普及前後の3段階において、我々日本人は別の種族なのだと思う。ひいい。

 

多様な視点とは言い難いし、むしろ学生運動や成田空港闘争の闘争者側に完全に寄り過ぎていて、好み、評価は大いに分かれると思う。それも含めて◎。

 

 

会場の堀川御池ギャラリーには、@KCUA(アクア:京都市立芸術大学ギャラリー)が入っており、現理事長・学長にして元・大阪大学総長の鷲田清一氏が

 

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なにしてはるんですか\(^o^)/ 

 

 

 

○赤No.2_ギャラリー素形/サラ・ムーン『Late Fall』

 200余年の歴史をもつ京町屋に2008年より店を構える菓子屋・然花抄院(ぜんかしょういん)さん。そのギャラリーにて特異な世界が展開されている、

 

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 まず菓子の誘惑が・・・。

高級和菓子・・・カステラとかどらやきとか・・・。

カフェスペースもあるし…。

それらをふりきる。

するとサラ・ムーンの醸す魔性400%の暗黒世界が華を開く…

 

 

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( ゚q ゚ ) うわー。

すいません全然雰囲気違います。こんな、おばけの正体をライトで照らして回るようなことになってしまうとは。

 

会場に実際に行って、身を以って体感いただくほかはない。

 

サラ・ムーン『Late Fall』の凄さは、油絵の絵画作品にしか見えなかった点。絶対に写真ではないと思った。何か別の美術作品を撮ったのではないかと。

しかしよく見ていると、それらが静物をとらえた写真であることに気付く。鳥の写真はまだ判りやすかった。おびただしいシミのようなカビのような斑点や模様が画面に入っているが、これは撮影時にガラスをかませたか、撮った写真の上にガラスを被せて再撮影したか、手法を詳しく聞けなかったがとにかくひと手間加えている。

 

アプリ等でアートっぽくひと手間加えることで、みんながいいねと言えるような安全なものにグレードをいったん落としてから流通させるのが現在の我々のWebライフだと思うが、やはりそれとは真逆の思考をつきつめないと、とてもではないが「作品」や「世界観」など生み出せないと分かった。

 

 

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 これは鍋釜のたぐい。京町屋は主動線に台所。

 

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ギャラリー素形 であった。これは天井にむかう柱。こころがおちつく。

 

 

引き続きKYOTOGRAPHIEをレポしたいと思う。