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写遊百珍

関西をメインに、美術館・アートイベント、登山、廃墟、珍スポットなど珍奇なものをご紹介。

【ART】水都2009 (2)ヤノベケンジ特集(前編)

「水都2009」(2)ヤノベケンジ特集(前編)


あひるちゃん(名称;フローティング・ダック)に引き続き、水都2009のレポートです。
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水都2009(1)フローティング・ダック
 http://mareosiev.hatenablog.com/entry/20090922/1345273859

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お次は関西出身のアーティストにして、高度成長期〜冷戦、そして世紀末を駆け抜けた「祭りの後」世代の申し子、ヤノベケンジです。


彼の作品は以下の場所で見ることが出来ます。
大阪府中之島図書館/≪森の映画館≫
大阪市役所(1F正面玄関ロビー)/≪ジャイアント・トらやん≫


○アートエリアB1(京阪なにわ橋駅・地下1Fコンコース)/≪サヴァイヴァル・システム・トレイン≫≪タンキング・マシーン≫≪ミニ・タンキング・マシーン≫≪ラッキードラゴン(コンセプト模型、絵本原画等)≫


○「水辺の文化座」(中之島公園ローズポート)/≪ラッキードラゴン≫




その他、トークイベントや、アート船≪ラッキードラゴン≫に乗ってのクルーズなど目白押し。まさかここまでやるとは思わなかったよ、一体何があったんだ。それなら「太陽の塔」とのコラボイベントもやってほしかった・・・。


ヤノベケンジとは誰か、というところから触れましょうか。
彼の創作は多岐に渡り、一言ではジャンルが特定できません。するならば「妄想を具現化する」ことを生業としてるようです。


絵も描くし、写真も撮り、小物を配したり、人が乗ったり入ったりできるメカを作ったり、あまつさえ人を踏み潰しそうな巨大なメカまで生み出す始末です。昔の漫画や特撮ものでよく出てきた「博士」と呼ばれるたぐいの、妄想を具現化する万能者といったところでしょうか。それだけではないのが彼の魅力です。


私が彼を知ったのは、確か2002年頃の国立国際美術館(当時は万博公園の隣)での特集展でした。
特に、冷戦期以降の世界;放射能が蔓延し、目に見えない死の脅威が濃厚な世界、において、人類(特に、子供)がいかにして「サバイバル」するかに着眼したスーツやマシンが目白押しでした。彼の妄想世界を脇から、周囲から描き立てる装置の数々は、観る者の想像力をじわじわと刺激します。ただでさえ私のような80年代生まれには、放射能だの祭りの後の喪失感だのは良く効く。そこにキャッチな色彩、滑稽さ、そのうらはらのシビアな設定が絡み合ってマシンを見せ付けられると、もう止まらなくなってしまうのでございます。よよよ。


作品のみならず、ヤノベケンジ本人も彼の妄想世界を描き立て、その中へと観客の代わりに足を踏み入れる探索者として働きかけます。ここが面白いところで、彼は製作者、表現者、発明家、語り部である以上に、自身の妄想世界に対する決死のレポーターであり先駆者として突入してくのでした。自作のアトムスーツ(放射線感知服)を着用してチェルノブイリへ赴いたり、太陽の塔の内部に立ったりして、文明の過度な成長の後、祭りの後に立ち、我々観客に壮大な何かを見せてくれます。



あの当時に、会場にぎっしりと散りばめられた黄色いアトムスーツや、ガスマスクを着けたマシン等が、こんな身近なところで再び見られるとは思いませんでした。それも無料。しかも撮影可能。

( /・o ;) 大盤振る舞いもいいとこです。ありえん。ありがとうよう。。


彼の作品は、見て楽しむだけでなく、彼が付与した壮大な妄想世界の裏付け、その世界の中での珍妙にしてシビアなサバイバル機能について触れるとより一層面白くなります。というよりそのバックボーンが無いと勿体ないので、ぜひ触れてみてください。


それでは、会場と作品の紹介を。


今回は上記のうち二つ、


大阪府中之島図書館/≪森の映画館≫
大阪市役所(1F正面玄関ロビー)/≪ジャイアント・トらやん≫
のレポートです。



まずは≪森の映画館≫から。



会場が府立中之島図書館ということですが、図書館内へ入らなくても大丈夫です。通常は本館内に入るときは係員にパスを貰い、胸に付けて、荷物をロッカーに預け、やたらうろうろしている警備員に「ちわっス」「ぅっス」とか言いながら入っていくことになります。

市役所側の、裏手の方からそろりと入ると、


「トらやん」が立っています。

このキャラクターは一体何なんでしょうね。。
阪神ファンの、ゆるゆるのおっちゃんを思わせるこの愛嬌というか、うかつな顔は。
ヤノベ世界につきもののアトムスーツを着ているところを見ると、彼も放射能に満ちた世界をサバイバルするナビゲーターのようです。

ジャイアント・トらやん」の方はメディアで伝え聞いています。曰く、巨大。曰く、子供を守るために生まれた。曰く、子供の命令しか聞かない。曰く、六本木で火を噴いた。金沢の「子供都市計画」で火を噴いた。


しかし大きくない方の、おっさん顔をした「トらやん」は初めて知りました。前からあったのかな・・・。いかにも関西らしいキャラです。関西というか大阪ですか。虎模様に塗装し直せば甲子園球場に散りばめてしまえそうです。


「水都2009」ではあちこちにこの「トらやん」が登場します。妖精的なポジションです。



展示としては、部屋の中にトらやんの家が建ててあり、観客は家の中で流れる映像を窓から覗いて見ることになります。

トらやんの誕生エピソードと、漫才のようなやりとり。最後に締めくくりとして、有事の際の生き延びについて語られます。子供にサバイバルをやさしく伝える口調でした。


トらやんと、おっちゃん。二人の関係やいかに。


このおっちゃんは、ヤノベケンジの実父らしいです。
元々はお父さんが定年退職後、趣味でやっていた腹話術からヤノベケンジの着想を経てこの「トらやん」に至ったと。




ゆえに、映像は基本的に腹話術。トらやんの声は憎めない声高の、幼児性の高いおっさん。子どもともおっさんともつかぬトらやんと、実父とのぬるーいコントが続きます。



ただ、最後には子供たちに向けて、有事の際のサバイバルについて説明があります。




トらやんの家は、実は子供向けの核シェルターなのです。映像を見て、安心して、レクチャーを受けて、机の上のお菓子を食べて、屋外のガイガーセンサーが安全を示すまで、その中で退屈せずにいられるようにとの考えから生み出されています。

6〜7分ぐらいの映像作品だったかと思います。楽しめました。これも無料ですから驚きです。


しかしこの図書館自体が黙っていても既に芸術の域なのです。


図書館中央の天蓋は見事! 本当に円が美しく、きれいな貝殻のようです。
しょうみ、どんなアート作品持ってきても、この建造美には勝てないと思います。


許可を取ればこの天蓋やホールの撮影が可能です。1〜2分で許可は取れます。
必見。


難を言えば、せっかくの素晴らしい階段や通路が貼り紙だらけで、撮っててひどくみすぼらしい、ということです。ほんと貼り紙や看板はスマートにしてほしい・・・地元の図書館みたいな感覚で使わないでほしいです。


それではお隣に立つ、大阪市役所に行ってみましょう。


はい、大阪市役所です。私が採用試験を受けようとした年度になって、いきなり市長が新規採用を凍結しますなどと言うたものですから、どうしようもありませんでした。うう。行けるものなら行ってみたかった。


無骨な外観は好きですね。衒いがなくて。
古来からの建物といった感じが良いです。



1F正面玄関すぐのロビーに、「ジャイアント・トらやん」がずんと立っています。
迷う余地がないぐらい堂々と。


ずううぅぅぅん。
この存在感。たまりません。こうでなくては。

公式サイトでの説明文が、
『巨大化したトらやん人形。
子供の命令にのみ従い、歌って踊り、火を噴く子供の夢の最終兵器。』

です。「兵器」ですからね。


入口付近から。


さすが市役所。G・トらやんの持つ破壊性や物々しさ、驚異がことごとく抑制され、単にレトロな外見の巨大展示、というところにとどまっています。


本来のG・トらやんは、可動域があり、上半身がぐるりと回ったり、胸元の扉が開いたり、目が発光したり、火を噴いたり、それはそれは動きます。



ヤノベケンジの作品は決して、大人しく鎮座させて、傍から見て楽しむに留まりはしないというところが魅力なんです。こちらへの働き掛けも甚大ですし、こちらからの積極的な働き掛けが肝要です。

火を噴かせてやってくれ!!頼むよ!!


あおり。
愛嬌のあるお顔です。かわいい。

かわいくて、巨大なものに弱いんでまいりました。
ブリキ、金属感むき出しの顔って素敵です。
全長7.2m、傍に寄ると圧巻。


バックに回り込んで。
後姿も素敵ですよ・・・惚れました。

さすがは大阪市役所。80年代の建築物ながら、天井の照明などはなかなかに古風でよいムードです。


80mm相当で縦位置撮影。かなり無理が・・・素直に広角で撮るべきだったかな。
館内はそんなに明るくはないのでISOを500より上げないと手ぶれするかもです。


一見ただのデザインにしか見えない種種のパーツが可動域だとは、このまま安置させるのは悲しいところです。
市役所勤めしている友人に聞いたところ「1時間に一回動くよ」と言っていました。マジでか!! くはあ。うらやましい。そんなに何度も行けるかww


おっさんのトらやんもいます。
G・トらやんの向かい。
彼は何気にガイガーカウンターを搭載したアトムスーツを着用しているので有事の際には役に立つと思います。


角度を変えて。
周囲には見物客がちらほらいました。
ヤノベケンジ関連作品のスタンプラリーが催されており、そのコンプリートのために子供連れでお母さんが回っていたりします。このときは平日だったので空いていました。

ぼんやり光っている目がなんとも言えません。
火は噴いてほしいけど、どうせならずっとここにおってほしい・・・。
複雑な心境です。


まあ、「水都2009」が終わったら、彼は全国を行脚することになるでしょう。



このイベントのどの作品にも言えますが、観るだけならかなりサラッと終わります。「あ、こんなんなんや」「へえー」「ふぅん」と。ただ、筆記や撮影が認められた瞬間に、こちらからの働き掛けは一気に手数が増えます。携帯で撮って友人に送ったり、待受け画面にしたり。ウェブでレビューを書いたり、見つめて自分のモチベーション向上に使ったり。


( ー_ー) いい時代になってきてますよ。アートはやっぱり枠組みの外へ! 既成概念の外へ! 


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今になって見つけましたが、「トらやん」「ジャイアント・トらやん」に関して詳細な説明が見つかりました。これを見た方が確かです(オイ)
http://www.roppongiartnight.com/interview/index.html

作者本人のサイトが一番よく解るです。
http://www.yanobe.com/works.html

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次回は「水都2009」ヤノベケンジ特集(後編)
 http://mareosiev.hatenablog.com/entry/20090925/1345273859

関連作品その他をご紹介。
トらやんがどこまでも登場します。